複数の最適化手法を駆使した水処理プラントの配置設計自動化、日本オペレーションズ・リサーチ学会の事例研究賞へ輝く

複数の最適化手法を駆使した水処理プラントの配置設計自動化、日本オペレーションズ・リサーチ学会の事例研究賞へ輝く

水処理プラント配置設計の自動化が日本オペレーションズ・リサーチ学会事例研究賞に選ばれる

日本オペレーションズ・リサーチ学会において、水処理プラントの配置設計の自動化に取り組んだ事例研究が高い評価を得て事例研究賞を受賞しました。この取り組みを行ったのは、北林康弘社長が率いるFracta Leapと江尻裕彦社長が統括する栗田工業の二社で、“メタ・アクアプロジェクト”の一環として行われました。配置設計の自動化は、工事コストや装置特性、敷地スペースや水の流れ等、多岐に渡る条件を考慮した上でコスト最小を達成しなければならない難易度の高い課題でした。

この記事の要約

  • 複数の最適化手法を駆使して水処理プラントの配置設計を自動化した事例研究が日本オペレーションズ・リサーチ学会の事例研究賞を獲得した。
  • この取り組みは、Fracta Leapと栗田工業が協力し、“メタ・アクアプロジェクト”の一環として行われた。
  • 配置設計の自動化は、多岐に渡る条件を考慮したうえでコスト最小の目標を達成する必要がある難易度の高い課題で、これまで実運用可能なアプリケーションは存在しなかった。
授賞式の様子〈当社エンジニア 請川(左)・CPO 村井(右)と、OR学会 山上会長(中央)〉

同学会は、1957年設立の歴史ある学術団体であり、複雑な社会課題を数学的手法で解決するオペレーションズ・リサーチ(*1)領域の日本最大の学会です。「事例研究賞」は、オペレーションズ・リサーチを用いた優れた事例研究に贈られます。今回は、水処理プラント設計の中でも、インパクトが大きく難易度が高い「配置設計の自動化」を対象に、複数の最適化手法を併用することで解決を目指した意欲的な取り組みが高く評価されました。受賞者として、リードした当社シニア・アルゴリズムエンジニアの請川克之と、担当役員(CPO)の村井真也が表彰されています。なお、設計自動化の手法に関しては、既に当社より特許を出願済みです。

 

取り組みの背景

Fracta Leap(東京都新宿区、社長:北林 康弘)と栗田工業株式会社(東京都中野区、社長: 江尻 裕彦)は、水処理における画期的なデジタルソリューションの構築を目指す「メタ・アクアプロジェクト(*2)」の一環で、数理最適化アルゴリズムによる水処理プラントの設計自動化に取り組んでいます。

今回の受賞対象である「配置設計」は、特に難易度の高い設計プロセスの一つです。設計者が装置を配置する際には、工事コストや装置特性をはじめ、敷地スペースや水の流れといった物理的条件、工事タイミング、運転管理のしやすさなど、複雑で多岐にわたる条件を考慮する必要があります。

これらの条件を満たしつつコスト最小を実現しなければならず、業界内で実運用可能なアプリケーションは未だ存在していません。現状は設計者が手動で行っており、作業量は煩雑かつ膨大になります。その結果、設計方法が属人化してしまうことで、品質のばらつきや、一部のベテラン設計者への業務の集中、複数の配置案の比較検討ができないといった多くの問題を抱えています。

複数の最適化手法によるアプローチ

まず、設計者からのヒアリングを得ながら設計実務を詳細に分析し、設計上の制約条件の整理を行いました。

その結果、大きく2つのアプリケーション構成とし、複数の最適化手法を併用することで自動化の実現に取り組みました。はじめに、装置グループ単位での大雑把な配置算出を行います。空間を大雑把に区切り、各空間へどの装置グループをどの辺りへ割り当てるかを組合せ最適化問題として扱い、それを数理モデルに落とし込んで数理最適化ソルバーを利用して解くとともに、開発したメタヒューリスティクスも併せて活用しています。次に、個々の装置の位置算出には貪欲法をベースとしたアルゴリズムを開発し、リアルタイムでの解の算出を実現しています。

今後の展開

当初は実現に10年ほどかかるのではと言われていましたが、すでに本取り組みを活用した「配置設計アプリケーション」のβ版を2022年にリリースしており、2023年3月には配置設計以外にも「装置構成アプリケーション」と「工事計画アプリケーション」のβ版をリリースし運用を開始しています。

一連の設計自動化ソリューションを運用することで、設計業務量は6割削減され、設計期間は4割短縮される見込みです。それにより、設計期間の短縮や設計者のリソース不足解消に加え、水処理プラントのライフサイクルコストの最適化、環境負荷抑制を含めたライフタイムバリューの向上にもつながります。

設計者からの好評価なフィードバックを得ていますが、未だ難易度の高い課題が残っており、アルゴリズムを含めたアプリケーションのさらなる改善を進めています。今後もデジタルソリューションによる水インフラの課題解決を目指して取り組んでいきます。

▼本件の詳細に関しては下記よりご覧ください。

●日本オペレーションズ・リサーチ学会機関誌 vol. 68 (8), pp.415-420, 2023

https://orsj.org/wp-content/corsj/or68-8/or68_8_415.pdf

●自動設計アプリケーションのβ版開発完了および運用開始

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000075296.html

●「設計自動化ソリューション」のβ版ラインナップを拡充

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000075296.html

採用情報

Fracta Leapでは、アルゴリズムエンジニア(数理最適化技術を活用)、アーキテクト/テックリード、プロダクトマネージャーなどのプロフェッショナル人材を積極的に採用しています。

▼アルゴリズムエンジニアポジションは、以下からご応募ください。

https://www.wantedly.com/projects/1737198

▼当社の募集ポジションは、以下でご覧いただけます。

https://www.wantedly.com/companies/company_990224/projects

▼当社の取り組み事例については、以下でご覧いただけます。

https://note.com/fractaleap/n/n3d28523d32dd

*1 「オペレーションズ・リサーチ」… 様々な問題、特に意思決定に関わる問題の解決を科学的なアプローチで支援する技法。現実世界の問題を数学的にモデリングして解き、そこで得られた最適解(または有効な解)をもとに、合理的な意思決定を目指すのが特徴。(学会HP https://orsj.org/

*2「メタ・アクアプロジェクト」… 持続可能な水処理インフラの実現に向けて、デジタル技術による産業変革を目指すFracta Leapと栗田工業の共同プロジェクト。AI・IoT技術などを用いて、水処理プラントの設計・生産及び運転管理のスマート化(効率化・高度化)を推進している。

<参考:各社ホームページURL>

Fracta Leap株式会社  https://fracta-leap.com/

栗田工業株式会社   https://www.kurita.co.jp/

記事選定/ライター
NFT-TIMES 長尾英太

ブロックチェーン技術記者、長尾といいます。ブロックチェーンについては投資/投機的な観点よりも、技術として未来の社会でどのように取り込まれていくかを中心に発信したいです。最近ではNFTやメタバースなどに注目しています。 1989年11月7日千葉出身。大学卒業後IT企業に入社。2017年にブロックチェーンの技術ライターとして独立。 Twitter
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