東京大学とアクアスター、イラストレーションの技術可視化への挑戦:共同研究開始に皆様へ発表
アクアスターと東京大学がイラストの技術可視化に取り組み開始
東京都中央区に拠点を置く株式会社アクアスターは、東京大学大学院医学系研究科の原木万紀子客員研究員と共同で、イラストレーターの技能の可視化研究を開始します。この研究では、アクアスターのイラストレーターの技能を原木氏の調査を通じて評価し、「伝える力」に与える影響を調査します。目指すは、医療分野でより効果的なコミュニケーションを可能にするため、イラストレーションの描画技術を体系的な教育カリキュラムに落とし込む初の試みです。
この記事の要約
- アクアスターと東京大学がイラストレーションの技術可視化に共同で取り組む
- イラストの技術を評価し、「伝える力」に与える影響を調査
- この研究は医療分野でのコミュニケーション向上を目指し、国際的な教育カリキュラム制定に向けた取り組みである
絵コンテやライセンスイラストの制作を手がけて33年の株式会社アクアスター(所在地:東京都中央区、代表取締役社長:原田 弘良、以下 当社)は、東京大学大学院医学系研究科大学院医学系研究科原木万紀子客員研究員(以下原木万紀子先生)との共同研究を開始します。
■概要
当社のイラストレーター技能を原木万紀子先生の調査により可視化し、各技能が「伝える力」に与える影響を評価します。この基礎研究はメディカルイラストレーションの描画技術を言語化し、外科医の医師が臨床現場にて患者とのコミュニケーションに活用可能な技術を選定、体系的に描画技術を教授可能な国際的なカリキュラム制定に向けた取り組みに繋げていきます。
■背景
外科医の90%以上は自身が診療場面において自ら描画を行っているが描画技術に精通している人材・描画技術を伝えるカリキュラムが構築されていない。
臨床の場面における医師-患者間コミュニケーションには、医療に対する知識の違いから多くの場合で摩擦が生じえます。それらの摩擦は、治療の質、医療に対する安心感や満足感の質にも寄与することが明らかとなっており、コミュニケーション円滑化の一手段として、外科医の90%以上が診療場面において自ら描画を行っていることが、 欧米を中心として近年明らかになっています (Siegel, Noah, et al.(2023).)。そのため、医師の間で複雑な医療情報をより簡潔にそして正しく描写するための”描画技術”を取得するニーズ が高まっています(Kearns, C., Kearns, N., & Paisley, A. M. (2020).Card, Elizabeth B., et al.(2022).)。しかし、多忙な臨床現場において描画の技術を学ぶ機会は皆無に等しいのが現状です。
近年、世界では医師向けの描画技術向上カリキュラムや、描画技術を評価するための研究が実施され始めています(Siegel, Noah, et al.(2023).)。しかし、描画技術がこれまで“経験”によって技術習得を行う手法をとってきたことから、技術の定量的な評価が難しいことに加え、研究を実施可能な、専門人材や環境の少なさなどがネックとなり、未だ医師向けの描画技術教授のための確固としたカリキュラムの構築には至っていません。
このような背景から、非言語領域である描画技術の言語化を行い、技術の定量的評価を実施することの必要性が高まっている中、年間5,000件以上のイラスト制作を行う当社の技術とイラストレーター育成システムが着目され、共同研究の運びとなりました。
■イラストレーター技術の見える化について
当社は、様々な表現に対応する描画技術を0から教育するスキルモジュールを有しています。これらのモジュールは以下の2つに分かれます。
1.基礎能力編(7パート:人体、立体、タッチ、構図、パース、着彩、合成)
2.応用表現編(12パート)
各パートには採点基準が設定され、技術をマスターしたプロフェッショナルが5段階のリッカート尺度で評価します。
本研究では、非言語的なイラストの描画技術を言語化することを目的とし、基礎能力編の評価基準に基づいて技術を分析します。技術採点を担当する卓越した技術を持つ専門家にインタビュー調査を実施し、その結果を科学的に解析することで描画技術の言語化を試みます。
■伝える力について
イラストレーションを通じて情報や感情を効果的に伝達する能力のことを指します。これは今回の研究において以下のような要素を含みます。
1.解剖学的な正確さ:体のどの部分がどのように手術されるのかを正確に描くこと。
2.患者の理解促進:専門的な医療用語を使わず、視覚的に分かりやすい形で説明すること。
3.不安の軽減:イラストを使うことで患者の不安を軽減し、安心感を与えること。
■期待される成果
・アクアスター側
1.イラストレーター技能の可視化:評価基準に基づく教育プログラムにより、人材育成の早期化が期待されます。
2.社員のモチベーションとパフォーマンス向上:具体的な評価基準とフィードバックにより、社員のモチベーションとパフォーマンスの向上が期待されます。
・東京大学側
1.描画技術の言語化:医療イラストの技術を言語化し、評価基準を明確にすることで、より効果的な教育カリキュラムの開発が可能となります。
2.医療コミュニケーションの改善:具体的な描画技術が医療現場でのコミュニケーション向上に寄与し、患者との理解を深めることが期待されます。
■東京大学大学院医学系研究科
公共健康医学専攻 医療コミュニケーション学教室 木内 貴弘 教授について
東京大学大学院医学系研究科にて、医療・公衆衛生分野の“伝える、わかる、納得する、協働する”を科学する、医療コミュニケーション学教室を主宰。量・質両方のアプローチを駆使し、医療を取り巻くコミュニケーションの課題に取り組み、分野の先頭に立ち、後進の育成に尽力しています。
■東京大学大学院医学系研究科 原木万紀子客員研究員について
東京大学大学院医学系研究科 客員研究員/京都芸術大学で客員准教授/10月よりエストニアのタリン大学にてポストドクトラルフェロー
複雑な医療情報を齟齬なく伝達するため、美術分野のバックグランドと医学の知見を駆使し、理解促進・知識持続に効果的なイラストレーションの研究を、科学的に実施しています。
【研究紹介】
■がん情報の提供を想定した適切なイラストレーションの模索
国立がん研究センターと共同で、がんセンターが保有する患者さん向けがん情報資料を活用し、それに付随するイラストとしてどのような描写、どのような描き方が適切であるのかを調査し、情報伝達時に、興味喚起・理解促進が期待できるイラストの提言を行いました。
■裁判員裁判で用いる御遺体写真のイラスト化の検討
裁判員裁判をはじめ、陪審員制度では市民が裁判に参加し、時に殺人や傷害事件の凄惨な証拠写真を閲覧する機会のため、参加者の心理的負担が大きな課題となっています。情報として適切で凄惨さを軽減しうるイラストレーションの描き方を調査し、論文化を行いました。
●株式会社アクアスターについて
1991年の創業からビジュアル制作をメインとし、広告での絵コンテやイラストに関わってきました。2020年以降はアニメやゲームなどの版権イラスト企業からの依頼を多く手がけつつ、WEBページやSNSマーケティング、VR空間の設計といったデジタル関連のサービスを手がけています。
当社には美大芸大を卒業した約60名のイラストレーターをはじめ、最先端のデジタルコンテンツを開発するエンジニアなど広告クリエイティブ制作を担うクリエーターが多数在籍しています。プロジェクトごとに企画提案~実制作、改善提案までをワンストップで手掛けることが可能な点が大きな特徴で年間約5,000件の案件をこなしています。
名称:株式会社アクアスター
所在地:東京本社 〒104-0045 東京都中央区築地1-13-1銀座松竹スクエア7F
関西支社 〒550-0002 大阪市西区江戸堀1-22−4肥後橋イシカワビル702
代表者:代表取締役社長 原田弘良
設立年月日:1991年11月14日
公式webサイト:https://aqua-star.co.jp/
制作事例:https://aqua-star.co.jp/works/
▼本件に関するお問い合わせ/取材に関するお問い合わせ
株式会社アクアスター 広報担当:神谷